出演者/スタッフ

登場人物&キャスト

朴 烈 (パク ヨル)

(1902年3月12日〜1974年1月17日)

「私は朝鮮の犬ころです」
日本帝国を揺るがした
李氏朝鮮時代の最も“不逞な”青年

朝鮮人の無政府主義運動家。1902年、慶尚北道生まれ。三・一独立運動後、1919年に日本へ渡り日本で社会主義運動に参加。そこで金子文子と出会い、公私にわたるパートナーとなる。 日本植民地時代に反日運動に全精力を捧げた朴烈の暮らしは、貧しかったかもしれない。しかし、彼は朝鮮人を嘲笑う日本人に対し全身全霊で刃向かい、全朝鮮人の中で最も反抗的な人物であった。関東大震災後の混乱期の朝鮮人虐殺を隠蔽するスケープゴートとして1923年9月3日、金子文子とともに逮捕されたが、皇太子暗殺計画を自白することで日本政府を逆に混乱に陥れる。世界が注目する裁判において、彼は日本人が仕掛けた筋書きに対抗するヒーローになる決意をする。大逆罪に問われ、死刑判決を下されるが、恩赦により無期懲役へ減刑。第二次世界大戦終結後に出獄し、大韓民国へ帰国。1974年、北朝鮮で死亡。

イ・ジェフン/이제훈

(1984年7月4日-)

繊細な感情表現と力強い演技で魅せる
ライジング・スター

『Bleak Night(原題)』で印象深い演技を見せたイ・ジェフンは確かな演技力で、『高地戦』『建築学概論』『探偵ホン・ギルドン ~消えた村~』などに出演。『シグナル』や『明日、キミと』『秘密の扉』(NHKBS放映中)などのテレビドラマに出演し、人気スターとなる。本作で、日本統治下に生きた無鉄砲な自称アナキスト・朴烈役を演じ、大きな転機を迎えた。この役のために、外見を変え、日本語を学んだほか、朴烈の人生についても調べ、若きアナキストの信念を懸命に表現した。イ・ジェフン自らが俳優としてのキャリアの転換点と考える本作で、すべてのシーンで卓越した演技を見せ、観客の感動をもたらすだろう。

金子 文子(かねこ ふみこ)

(1903年1月25日〜1926年7月23日)

「一緒に暮らしましょう。
私もアナキストです。」

1903年、横浜市に生まれ。大正期に活動した無政府主義思想家。複雑で恵まれない家庭環境で育ち、親類の元を転々とする。9歳から16歳まで朝鮮半島で過ごし、1919年には独立運動の光景を目の当たりにする。直後に帰国し17歳で単独上京。社会主義者との交流の中で朴烈と出会う。本作では、朴烈と初めて出会ったとき、金子文子は自分をアナキストだと名のり、同棲を提案する。文子は日本人であるが、日本の植民地主義には反対で、朴烈の同志そして恋人となった。朝鮮人虐殺事件隠蔽のスケープゴートとして逮捕された朴烈と共に投獄され、のちに大逆罪で起訴された。日本帝国政府の懐柔と迫害にも屈せず、堂々とした態度を保ちつづけ、日本政府を揺るがすこととなった裁判に朴烈と共にかけられる。大逆罪で死刑判決を下されるが恩赦で無期懲役へ減刑。しかし1926年7月23日に獄死した。著作に『何が私をこうさせたか――獄中手記』(岩波文庫)がある。

チェ・ヒソ/최희서

(1987年1月7日-)

本作を機に一気にスターダムへ!
イ・ジュンイク監督のミューズ

大阪(建国小学校)と米国に居住経験のある帰国子女。イ・ジュンイク監督のミューズとして『空と風と星の詩人 尹東柱の生涯』で名を馳せたチェ・ヒソ。同作でクミ役を演じ、繊細な感情表現と完璧な日本語で強い印象を残した。今回再び、イ・ジュンイク監督の作品に抜擢された。本作では、日本人でありながら、朝鮮の独立と日本帝国主義への抵抗を貫いた強い女性・金子文子を演じた。チェは金子文子の自伝に基づいて役作りした。その過程で、日本人なまりの朝鮮語に話しているように聞こえるように、自身のセリフをひらがなに書き直すなど、様々な努力を惜しまなかった。その結果、イ・ジュンイク監督は彼女の文子は完璧だと褒め称えた。本作を通して、女優チェ・ヒソは確かな演技力でスターへの足掛かりを確かなものにした。

水野 錬太郎(みずの れんたろう)

(1868年2月3日〜1949年11月25日)

「法と秩序を守るのは法務大臣の仕事。
私は内務大臣として我が国と国民と天皇陛下をお守りする」
法よりも日本帝国主義を重んじた内務大臣

水野錬太郎は秋田出身で官僚から政治家、内務大臣を務めた人物である。本作では、反朝鮮感情を焚き付け、関東大震災時の朝鮮人虐殺を引き起こすキーパーソンとして描かれている。さらに多くの朝鮮人が殺された後、国際社会からの批 判をそらすため、朴烈を標的に選び、大逆罪に問う。

キム・インウ/김인우

(1971年2月20日-)

独特の存在感で作品に緊張感を生み出す実力派俳優

『暗殺』『空と風と星の詩人 〜尹東柱の生涯〜』『お嬢さん』などで印象的な演技力を見せつけたキム・インウ。本作では、朝鮮人虐殺事件の火付け役であり、狂気じみた内務大臣の水野役を演じ、作品に緊張感をもたらした。イ・ジュン イク監督曰く、「キム・インウは自身が在日コリアン3世であり、日本人役を演じられる俳優として完璧だ。彼自身は日本の残虐性を批判しつつも、誰よりもリアルに邪悪で狡猾な水野を演じることができる」。

布施 辰治(ふせ たつじ)

(1880年11月13日〜1953年9月13日)

「この事件は明らかに捏造だ」
朴烈の無実を訴えた弁護士

布施辰治は社会運動家としても活動した弁護士である。「生きべくんば民衆とともに、死すべくんば民衆のために」を座右の銘として、彼の生き方は日本人や抑圧された朝鮮人の心を動かした。日本人でありながら、朴烈の弁護を引き受け、無実を訴えて事件の真相を明るみにしようと闘った。2004年に布施は日本人として初めて、大韓民国建国勲章を受章した。

山野内 扶/やまのうち たすく

(1970年7月20日-)

1970年、茨城県生まれ。高校時代より演劇を始め、上京後は東京を拠点に俳優活動。出演した短編映画「イリヤ(佐藤智也監督・2001年)」の富川映画祭への招待上映(2001年7月)を機に韓国に関わる。NHKハングル講座(2003年度)のショートドラマ「我が家万歳!」では主人公ヨシダを演じ、出演終了後も講座テキストでエッセイ「ワッタガッタ・ソウル(2004年10月~2007年3月)」を執筆する。2003年3月から延世大学韓国語学堂にて語学留学。2006年春にはモダンダンスグループ「Moo-e」の日韓公演に出演。KBSラジオ国際放送「玄界灘に立つ虹」にて、ラジオパーソナリティを務める(2007年5月~2008年12月/2010年9月~2013年3月)。現在はソウルを拠点に、韓国のほとんどの出版社の日本語教材、ゲーム音声、広報ナレーション等の日本語声優を務めるほか、翻訳、映画・ドラマ出演、日本語演技指導など、手広く活動中。趣味は日本の合気道(経歴8年・合気会2段)、日本古流剣術の天正真伝・香取神道流(経歴7年・目録取得)。

立松 懐清(たてまつ かいせい)

判事

キム・ジュンハン/김준한

(1983年3月29日-)

本作で主人公二人の予備尋問を行う立松判事役に大抜擢されたキム・ジュンハンは日本でバンド活動を行っていた経歴があり、驚くほどの日本語の能力を演技で示すことができた。イ・ジュンイク監督の最新作『辺山』(2018)では主人公の性悪な先輩役、また『ハーストーリー』(2018)では元日本軍従軍慰安婦の関釜裁判で原告の弁護を引き受けた在日弁護士にキャスティングされるなど、今後の活躍が期待できる。

牧野 菊之助(まきの きくのすけ)

裁判長

(1867年1月26日〜1936年12月24日)

金 守珍/きむ すじん

(1954年11月23日-)

蜷川スタジオを経て、唐十郎主宰「状況劇場」で役者として活躍。87年、日本の演劇界に失われつつある物語の復建を目指し、新宿梁山泊を創立。旗揚げより新宿梁山泊公演の演出を手掛ける。97年にはオーストラリア国立演劇学校から「特別講師」として招かれ、世界に通用する演出家と評判を呼んだ。99年にはニューヨークで「少女都市からの呼び声」を公演。その後、コロンビア大学にて特別講師として、清水邦夫作「楽屋」を演出。89年「千年の孤独」で89テアトロ演劇賞受賞。93年「少女都市からの呼び声」で文化庁芸術祭賞受賞。98年「飛龍伝」で読売演劇大賞演出家賞受賞。また、演出以外にも、映画監督、外部公演への出演、NHKドラマ、CM出演等、幅広く活躍している。01年、映画「夜を賭けて」にて初監督。02年全国公開され、第57回毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人監督賞/2002年度第43回日本映画監督協会新人賞を受賞。近年では、師匠と仰ぐ、蜷川幸雄の舞台「血は立ったまま眠っている」「下谷万年町物語」「盲導犬」に出演。2016年8月、蜷川幸雄追悼公演「ビニールの城」で、演出を担う。2019年2月、Bunkamura30周年記念シアターコクーン公演「唐版風の又三郎」の演出が決まっている。現在、韓国全州大学客員教授。

監督

イ・ジュンイク/이준익

(1959年9月21日-)

「あまり知られておらず、真意を見抜きにくい人物の生涯に、スポットライトを当てる映画を作りたかった」
歴史上の人物造形で卓越した才能を発揮する、韓国の巨匠

監督イ・ジュンイクは“1000万人の観客を獲得した映画監督”“生来のストーリーテラー”“歴史映画の魔術師”などという表現で讃えられてきた。『王の男』から『雲を抜けた月のように』『あなたは遠いところに』『ソウォン/願い』『王の運命―歴史を変えた八日間―』『空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~』まで、イ・ジュンイクは観客を引きつけ感動させる確かな演出術で、映画の完成度と興行成績をうまくミックスさせる監督として名声を確立してきた。今回、日本帝国を翻弄した実話に基づく本作でスクリーンに戻ってきた。前作『空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~』で、日本の植民地時代の短くも輝かしい青春物語を穏やかなトーンで描いた。本作では、朝鮮出身の向こう見ずなアナキスト・朴烈の人生を通して、燃え上がるような情熱の青春物語を描く。植民地時代を描いた映画にありがちな悲劇的で重い雰囲気とは一線を画し、歴史の見方を一新するようなワクワク感と痛快さを取り入れている。さらに、激動の時代の空気感と朴烈の鋭い洞察力も描く。本作を作った意図を聞かれたイ監督は次のように語る。「あまり知られておらず、真意を見抜きにくい人物の生涯にスポットライトを当てる映画を作りたかった」。朴烈というあまり有名ではない人物を通して、世界を再び魅了するであろうイ監督は、こう問いかける。「今日の社会に生きる私たちは、日本の植民地時代に生きた朴烈のように、世界に真正面から向き合っているだろうか?」

主な監督作

  • 『辺山』(2018)
  • 『空と風と星の詩人 ~尹東柱の生涯~』(2016)
  • 『王の運命―歴史を変えた八日間―』(2015)
  • 『ソウォン/願い』(2013)
  • 『Battlefield Heroes(英題)』(2011) *日本未公開
  • 『雲を抜けた月のように』(2010)
  • 『あなたは遠いところに』(2008)
  • 『楽しき人生』(2007)
  • 『ラジオスター』(2006)
  • 『王の男』(2005)
  • 『Kid Cop(英題)』(1993)*日本未公開 
  • 『黄山ヶ原(ファンサルボル)』(2003)

2019年2月16日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開